コラム

玄関扉は何がいいの?親子、シングル、引戸?

2024.10.12

玄関扉を選ぶ際には、デザインだけでなく、使い勝手や機能性も重視したいポイントです。玄関は家の「顔」とも言える部分であり、家全体の印象を左右します。そのため、開き戸、親子扉、引き戸といった扉の種類をよく理解し、それぞれの特徴やメリット・デメリットを比較しながら決めることが重要になってきます。この記事では、それぞれの玄関扉のタイプについて詳しく見ていきます。

 

シングル扉(片開き扉)の特徴

 
まずは、シングル扉と言われる片開き扉について見ていきましょう。
 

メリット

 
シングル扉、つまり片開きの扉は、玄関のデザインとしては一般的です。このタイプの扉は、建物のデザインに合わせて選ぶことができ、シンプルでありながらスタイリッシュな印象を与えます。シングル扉の大きなメリットは、設置スペースが少なくて済むことです。片側にしか開かないため、限られたスペースにも対応でき、狭い玄関でも無駄なく設置が可能です。

また、施工や交換が比較的簡単であり、バリエーションが豊富なため、好みのデザインを選びやすいという点も人気の理由です。さらに、片開きのため耐風性や防犯性が高いとされています。これは、構造上外部からの力を受けにくいという利点があるからです。

 

デメリット

 
シングル扉のデメリットとしては、扉の開閉に必要なスペースが大きいことが挙げられます。特に、外に向かって扉を開ける場合、外側にスペースがないと開閉がしにくくなることがあります。例えば、駐車場に面している場合や玄関前が狭い場合は、開けた扉が邪魔になる場合があるため注意が必要です。

また、荷物の搬入時など、大きな物を通す際には、一枚の扉では通りにくいことがあります。そのため、頻繁に大きな荷物を運ぶ機会が多い場合には、シングル扉では不便さを感じるかもしれません。

 

親子扉の特徴

 
続いて、親子扉と言われる扉について見ていきましょう。
 

メリット

 
親子扉は、大きな扉と小さな扉がセットになったデザインで、通常は大きい扉(親扉)を使用し、必要な場合に小さな扉(子扉)も開けられる仕組みになっています。このため、シングル扉の問題点である「大きな荷物を運びにくい」という点を解消できます。親子扉なら、通常の開閉は大きな扉だけで行い、大きな物を搬入する際には子扉を開けて広い開口部ができます。

さらに、デザイン性にも優れており、独特の重厚感を演出できます。一般的に親扉が大きいことから、玄関全体が堂々とした印象を与え、家全体のグレード感を高める効果があります。

 

デメリット

 
親子扉のデメリットとしては、通常のシングル扉に比べて設置スペースがやや広めに必要となることです。また、構造が複雑なため、施工費やメンテナンス費用が高くなる場合があります。防犯面においても、子扉部分が弱点となりやすいため、防犯性能を強化する必要があるかもしれません。

さらに、日常的には親扉しか使わないため、子扉を開ける機会はそれほど多くないことから、日常の利便性がシングル扉に劣ることもあります。

 

引き戸の特徴

 
では、玄関扉を引き戸にするとどのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。
 

メリット

 
引き戸は、扉をスライドさせて開閉するタイプの玄関扉です。引き戸の大きなメリットは、開閉にスペースを取らないことです。シングル扉や親子扉のように、扉が外側や内側に開くわけではないため、狭いスペースや玄関の手前に障害物がある場合でもスムーズに開閉できます。このため、限られたスペースでの利便性が高く、特に高齢者や小さな子どもがいる家庭において使い勝手が良いとされています。

また、引き戸は風の強い日でも扉が突然閉まる心配が少なく、風に煽られるリスクが低いのもメリットです。さらに、玄関周りのインテリアを邪魔することなく、美しい外観を保てるため、和風の家やモダンデザインの住宅に採用されることが多いです。
 

デメリット

 
一方で、引き戸にもいくつかのデメリットがあります。まず、構造が複雑であるため、シングル扉や親子扉に比べて施工費用が高くなることが挙げられます。また、スライドするレール部分には定期的にメンテナンスが必要で、汚れやゴミが溜まりやすいという課題があります。レールが劣化したり滑りが悪くなると、開閉がスムーズにできなくなる可能性があります。

加えて、引き戸は構造上、シングル扉に比べて防犯性能が低くなる傾向があります。これを補うためには、防犯ガラスや鍵の強化が必要です。
 

家族構成や生活スタイルに合わせた選択

 
玄関扉を選ぶ際には、単純にデザインやコスト面だけでなく、家族構成や生活スタイルを考慮することが重要です。特に引き戸と親子扉は、家の間取りや日常の使い勝手に大きな影響を与えるため、慎重に選ぶ必要があります。どちらかで迷っている場合は、以下を参考にしてみてください。
 

引き戸が向いている家庭

 
引き戸は、特に高齢者や子どもがいる家庭に適しています。扉の開閉に力を必要とせず、スライドさせるだけでスムーズに動かせるため、力の弱い人でも簡単に使えます。また、車いすやベビーカーを使う家庭では、開き戸だと扉の開閉スペースが邪魔になることがありますが、引き戸であればその心配がありません。

さらに、頻繁に荷物を出し入れするような家庭でも、引き戸は利便性が高いです。開けっ放しにしてもスペースを取らないため、荷物の搬入出時に扉が邪魔になることなく作業ができます。特に玄関の前が狭い場合や、駐車スペースと玄関が近い場合には、引き戸は非常に使い勝手が良いと言えるでしょう。
 

親子扉が向いている家庭

 
一方で、親子扉は玄関のデザイン性や広さを重視する家庭におすすめです。家族や来客が多く、頻繁に人の出入りがある家庭では、親子扉の広い開口部が役立ちます。通常は大きい扉だけを使い、必要に応じて小さい扉も開けることで、家具や大型の荷物を簡単に運び込むことができます。

また、親子扉はデザインのバリエーションが豊富で、家の外観に合わせて様々なスタイルを選べるため、家の印象を高めたい場合に最適です。特に、洋風の住宅や重厚感のあるエントランスを好む場合には、親子扉が適しています。

 

メンテナンスと耐久性も重要な要素

 
玄関扉を選ぶ際に見逃しがちなのが、メンテナンスや耐久性です。日々の使い勝手だけでなく、長期間にわたって快適に使用するためには、扉のメンテナンス性や耐久性も考慮する必要があります。
 

引き戸のメンテナンスポイント

 
引き戸は、レール部分のメンテナンスが重要です。レールにゴミが溜まると、扉の開閉がスムーズに行えなくなり、滑りが悪くなってしまうことがあります。そのため、定期的にレールの掃除を行い、ゴミやホコリを取り除きましょう。また、レールが劣化すると修理費がかかることがあるため、長期的なメンテナンス計画も考えておくと良いでしょう。

 

親子扉のメンテナンスポイント

 
親子扉は、扉のヒンジ部分や鍵のメンテナンスが必要です。子扉の使用頻度が低い場合、長期間使わないとヒンジが固くなり、開けにくくなることがあります。そのため、定期的にヒンジ部分に油を差すなどして、スムーズに開閉できるようにしておかなければいけません。また、親子扉はシングル扉よりも複雑な構造のため、鍵や扉自体のメンテナンスにも注意が必要です。

 

人数、年齢、生活習慣で選ぶ

 
玄関扉は、その家に住む人の人数、年齢、生活習慣によって、どのタイプの扉が最も快適で便利かが変わってきます。場合分けをしてまとめたので、自分の場合と比べてみてください。

 

小さい子どもがいる家庭

 
小さな子どもがいる家庭では、安全性と使いやすさが最優先事項となります。この場合、引き戸が最適です。引き戸は、開閉時に勢いよく開いたり閉じたりする心配がなく、指を挟むリスクが低いという利点があります。また、子どもが自分で扉を開ける際も、スライドさせるだけなので力が要らず、簡単に開閉が可能です。玄関に余裕のあるスペースを確保できるため、ベビーカーの出し入れや荷物を持ちながらの移動がしやすいのも大きなメリットです。

 

高齢者がいる家庭

 
高齢者がいる場合も、引き戸が便利です。引き戸は開閉が軽く、身体の負担が少ないため、力の弱い高齢者でも無理なく使用できます。また、介護が必要な場合にも、引き戸は車いすや介助者がスムーズに出入りできるため、介護の負担が軽減できます。高齢者向けの住宅では、バリアフリー設計の一環として引き戸が選ばれることが多いのもこのためです。

 

大人数の家庭や来客が多い家

 
大人数の家庭や頻繁に来客がある場合は親子扉が便利です。普段は親扉(大きい扉)のみを使用し、来客や大きな荷物の搬入時には、子扉も開けることで広い開口部を確保できます。特に、家族の人数が多く、一度に複数人が出入りすることが多い家庭では、玄関を広く使える親子扉は非常に実用的です。また、家の外観を重視する場合も、親子扉はデザイン性が高く豪華な印象を与えるため、来客の多い家にふさわしい選択肢です。

 

夫婦二人や一人暮らしの家庭

 
夫婦二人や一人暮らしの場合は、シングル扉でも十分です。頻繁に出入りする人数が少ないため、開口部の広さが問題になることはほとんどありません。シングル扉はコストパフォーマンスが高く、設置スペースも少なくて済むため、小規模な家や限られたスペースを有効活用したい家に向いています。また、デザインもシンプルでありながら多くの選択肢があるため、家の外観に合わせて好みの扉を選べます。

 

玄関扉のデザインと色の選び方

 
機能性だけでなく、玄関扉のデザインや色も家全体の印象を左右します。玄関は家の「顔」となる場所なので、外観との調和を考慮して選んでみましょう。

 

家のスタイルに合わせた扉選び

 
家が和風なのか洋風なのか、またはモダンなデザインなのかによって、玄関扉の選び方が変わってきます。例えば、和風の住宅には木製の引き戸がよく似合います。木目調の引き戸は、温かみのある自然な雰囲気を醸し出し、和風建築と見事に調和します。また、洋風やモダンな住宅には、アルミ製やスチール製の親子扉やシングル扉が適しており、シンプルでシャープな印象を与えます。

 

色の選び方

 
扉の色は、家全体の外壁や窓枠、屋根とのバランスを考慮して選ぶ必要があります。一般的に、外壁が明るい色の場合は、濃いめの扉を選ぶことで家全体が引き締まった印象になります。逆に、外壁が暗めの色の場合は、明るい色の扉を選ぶことで家全体が明るく開放的な印象になります。

さらに、家の立地や周辺環境も色選びに影響を与えます。例えば、自然豊かな環境に建つ家では、自然素材やナチュラルカラーの扉が景観に馴染みやすく、落ち着いた雰囲気を演出できます。一方で、都市部にある家では、モダンでスタイリッシュな色や素材を使うことで洗練された印象を与えることができます。

 

コストと予算に合わせた選び方

 
玄関扉の選び方には、予算の制約も大きく関わってきます。どの扉を選ぶにしても、最終的にはコストパフォーマンスを考慮して選ぶことが重要です。

 

シングル扉はコストパフォーマンスが高い

 
シングル扉は他のタイプの扉に比べてコストが抑えられるため、予算を抑えたい家庭には最適です。設置費用やメンテナンスコストも比較的低く済みます。また、シンプルな構造のため故障しにくく、長期間にわたって使用できることがメリットです。

 

親子扉や引き戸は機能性を重視する場合に選ぶ

 
親子扉や引き戸はシングル扉に比べると初期コストが高めですが、その分機能性が優れています。特に、引き戸はバリアフリー住宅や、荷物の出し入れが多い家庭には長期的に見て便利な選択肢となります。親子扉はデザイン性が高く、豪華な印象を与えるため、外観にこだわりたい場合に選ばれることが多いです。

 

施工時に考慮すべきポイント

 
玄関扉は、デザインや機能性を選ぶだけでなく、実際に施工する際にもいくつかのポイントを考慮しなければなりません。

 

断熱性能と防犯性能

 
玄関扉を選ぶ際、断熱性能や防犯性能も考えておくことをおすすめします。寒冷地に住んでいる場合は、断熱性能の高い扉を選ぶことで外気の侵入を防ぎ、家の中の温度を保つことができます。断熱性の高い玄関扉は、夏の暑さや冬の寒さを和らげ、室内の快適さを向上させる効果が期待できます。

一方、防犯性能についても見逃せません。玄関は家の中に入る一番目立つ入り口であるため、泥棒や侵入者から家を守るために、防犯性の高い扉を選ばなければいけません。例えば、施錠システムを備えた扉や、ガラス部分が防犯ガラスになっているタイプなどがあります。防犯性能の高い扉を選ぶことで安心して家に住めるでしょう。

 

扉の開閉方向とスペース

 
玄関扉の開閉方向は、家の設計や周囲のスペースを考慮して選ぶ必要があります。例えば、外開きの扉は、家の中にスペースを取らないために広い玄関を確保できるというメリットがありますが、外に広いスペースが必要です。また、外開きの扉は風で急に開いてしまうリスクがあるため、立地条件や安全面も考慮する必要があります。

一方、内開きの扉は外のスペースを確保する必要はありませんが、玄関の内側のスペースを取ってしまうため、狭い玄関では不便な場合があります。玄関の広さや使用頻度、また荷物を運び入れる際の利便性を考え、どの開閉方向が最適かを検討しましょう。

 

周囲との調和

 
玄関扉を選ぶ際、家の外観全体との調和も重要です。扉自体が素晴らしいデザインであっても、家全体とのバランスが取れていないと不自然に感じてしまいます。外壁の色や素材、屋根の形状、窓の配置などを考慮し、統一感のあるデザインを選んでみましょう。例えば、モダンなデザインの家にはシンプルで直線的なデザインの扉が合い、クラシックなデザインの家には装飾が施された扉が似合います。

 

まとめ

 
家の玄関を変えるだけで家全体の印象は大きく変わります。とはいえ、たくさんの種類があるとどれにしたらいいか迷ってしまいますよね。まずは、防犯、予算、デザイン、機能性など、何を優先するか考えてみてください。そこである程度絞ったら、細かい要望を詰めていきます。この記事でご紹介したポイントを押さえれば、後悔のない素敵な玄関ができあがるでしょう。

 

木楽ハウス 代表 塩川昌志(二級建築士)

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