コラム

新築住宅の断熱材選び:内断熱と外断熱の違いと選び方

2024.10.12

断熱性能を高めないと、快適な家にはなりません。特に、新築住宅やリノベーションにおいては、断熱材の選び方が居住環境の快適さに大きく影響します。この記事では、内断熱と外断熱の違いや、それぞれのメリット・デメリットを詳しく解説していきます。どちらが適しているのか考える時に、参考にしてみてください。

内断熱とは?そのメリットとデメリット

内断熱は、建物の内部に断熱材を配置する方法です。日本では一般的な断熱方法の一つで、施工のしやすさやコスト面からも広く採用されています。内断熱の大きな特徴は、断熱材を建物の壁の中に設置するため、外観を損なうことなく断熱効果を得られる点です。

内断熱のメリット

では、内断熱のメリットを見ていきましょう。

コストが抑えられる

内断熱は施工が比較的簡単で、使用する断熱材の量も少なく済むため、コストを抑えやすいのが大きなメリットです。予算を抑えたい場合や、手軽に断熱性能を向上させたいときには適しています。

リフォームや追加工事がしやすい

既存の住宅に後から内断熱を追加することができるため、リフォームの際にも利用しやすいです。また、部分的な断熱強化も可能で、特に寒さを感じる部屋だけに施工することもできます。

施工が簡単

内断熱は工事が簡単であるため、施工者の技術による違いが少ないとされています。特に木造住宅であれば、構造体の内側に断熱材を詰め込むだけで施工が完了するため、施工ミスのリスクも少なく、安定した断熱効果が期待できます。

内断熱のデメリット

一方で、内断熱にはデメリットもあります。

熱橋が発生しやすい

内断熱では、壁の構造部分(柱や梁など)が外部に直接触れることが多いため、熱橋(ヒートブリッジ)が発生しやすいです。その場合、断熱効果が部分的に失われることがあります。

結露が発生する可能性

熱橋が原因で結露が発生しやすくなる点も注意が必要です。壁内で結露が発生すると、建物の構造材が腐食しやすくなり、耐久性が低下する恐れがあります。これを防ぐためには、適切な換気や防湿対策が必要です。

居住空間が狭くなる可能性

内断熱を設置する際は壁の内側に断熱材を埋め込むため、壁厚が増し、結果的に居住空間がわずかに狭くなる可能性があります。

外断熱とは?そのメリットとデメリット

外断熱は、建物の外側に断熱材を取り付ける方法で、外断熱工法とも呼ばれます。この方法では、建物全体を断熱材で覆うため、熱橋を抑えることができ、効果的な断熱が期待できます。寒冷地や高温多湿な地域では、その効果が顕著に現れることが多いです。

外断熱のメリット

では、外断熱のメリットをチェックしていきましょう。

高い断熱性能

外断熱は、建物全体を外側から覆うため、内断熱に比べて圧倒的に断熱効果が高いです。特に、冬の寒さや夏の暑さが厳しい地域では、その効果が顕著に現れます。外断熱を採用することで、エアコンや暖房器具の使用を抑え、冷暖房費を削減できるという利点もあります。

熱橋が発生しにくい

外断熱は建物の構造部分も含めて断熱材で包み込むため、熱橋がほとんど発生しません。また、外断熱では内部の温度差が大きくなることが少ないこともあり、結露のリスクが低いです。特に、湿気の多い地域や寒冷地では結露が発生しにくい外断熱が適していると言えます。

室内空間を確保できる

外断熱は断熱材を外側に配置するため、室内空間が狭くなることがありません。限られた土地やスペースを有効活用したい場合には、外断熱の方が有利です。内断熱では失われる数センチの壁厚を確保することができ、より広々とした住空間を実現できます。

外断熱のデメリット

外断熱のデメリットも考えておきましょう。

施工費用が高い

外断熱は、内断熱に比べて施工費用が高くなる傾向があります。断熱材の種類や工法によってはさらにコストが上昇するため、予算に余裕がある場合でないと難しいことがあります。

外観のデザインに制約がある

外断熱を採用する場合、建物全体を断熱材で覆うため、外観のデザインに制約が生じることがあります。外断熱材の種類や施工方法によっては、希望したデザインが実現できないこともあるため、デザイン性を重視する場合には慎重に検討する必要があります。

メンテナンスが必要

外断熱では断熱材が外部環境にさらされるため、定期的なメンテナンスが必要です。外壁のひび割れや断熱材の劣化が進むと断熱効果が低下する可能性があるため、定期的な点検や補修が欠かせません。

内断熱と外断熱の選び方

断熱材の選び方は、家の設計や気候条件、予算などによって大きく左右されます。内断熱と外断熱のどちらが適しているかを判断するために、以下のポイントを考慮してみましょう。

気候に合わせた選択

寒冷地や湿気の多い地域では、外断熱の方が適していることが多いです。外断熱は、建物全体を覆うことで寒さや湿気を防ぐ効果が高く、快適な室温を保ちやすいです。一方、比較的温暖な地域では、内断熱でも十分な断熱性能を得られることが多く、コスト面でも有利です。

予算とのバランス

外断熱は内断熱に比べてコストが高いことが多いため、予算を優先する場合は内断熱が選ばれやすいです。ただし、初期費用を抑えた結果、長期的なエネルギーコストやメンテナンス費用が増える可能性もあるため、長い目で見たコストバランスを考慮することが重要です。

リフォームや増築の予定

将来的にリフォームや増築を考えている場合は、内断熱が便利です。内断熱は部分的に施工できるため、部屋ごとの断熱強化がしやすく、リフォームの際にも柔軟に対応できます。

内断熱を選ぶケース

内断熱が適しているケースについて、具体的にまとめてみました。

小規模な住宅や予算が限られている場合

内断熱はコストパフォーマンスが良いため、予算が限られている場合や、建築規模が小さい住宅では特におすすめです。例えば、平屋や小さな二階建て住宅であれば外壁面積が少ないため、内断熱で十分な断熱性能を得られます。さらに、壁の厚みを増やさない設計が可能で、内部空間を確保しつつコストを抑えられます。

リフォーム時や部分的な断熱強化を考えている場合

既存の住宅をリフォームする際、特定の部屋や寒さの強いエリアだけに断熱を施したい場合には、内断熱が便利です。内断熱は外壁を改修することなく、室内から断熱材を追加することで部分的な改善が可能です。また、増築を計画している場合でも内断熱は簡単に対応でき、リフォームの柔軟性が高まります。

外断熱を選ぶケース

次に、外断熱を選ぶべき状況について見ていきます。

寒冷地や温度差が大きい地域

外断熱は、寒さの厳しい地域や日中と夜間の温度差が大きい地域でその効果を発揮します。例えば北海道のような寒冷地では、外断熱によって建物全体を温かく保ち、冬場の暖房効率を大幅に向上させることができます。逆に、夏は建物内部を涼しく保ちやすく、年間を通じて快適な室内環境を維持できるのです。

長期的なエネルギーコストを抑えたい場合

外断熱は初期コストが高めですが、断熱性能が高いため、長期的には冷暖房費を大幅に削減できる可能性があります。エアコンや暖房器具の使用を抑えることで、年間のエネルギーコストが減少し、その分初期費用を回収できるケースも多いです。また、環境への配慮を重視する人にも外断熱は魅力的な選択肢と言えるでしょう。

内断熱と外断熱の組み合わせ

一部の住宅では、内断熱と外断熱を組み合わせた「ハイブリッド断熱」という方法も採用されています。この方法は、寒冷地や高断熱性能が必要な地域で採用されることが多いです。内断熱と外断熱の双方のメリットを生かし、断熱性能を最大限に高めながらも、コストや施工の手間を調整できるのが特徴です。

ハイブリッド断熱では、外壁に外断熱を施し、建物の内部では内断熱を追加することで、熱橋の発生を防ぎつつ、効率的に断熱性能を向上させることができます。この方法はエネルギー効率を追求する場合に適しており、近年では省エネ住宅としての価値も高まっています。

断熱材の種類による選択の違い

内断熱や外断熱を選ぶ際には、使用する断熱材の種類も考えておくと良いでしょう。以下に、代表的な断熱材の特徴を紹介します。

グラスウール

グラスウールは、主に内断熱で使用される一般的な断熱材です。コストが低く施工が簡単なため、広く普及しています。しかし、吸湿性があるため湿気対策が必要です。適切な換気や防湿シートを使用すると良いでしょう。

硬質ウレタンフォーム

硬質ウレタンフォームは高い断熱性能を持ち、外断熱でも使用されることが多い素材です。この断熱材は施工後に発泡して壁内に密着し、隙間なく断熱層を形成するため、熱橋の発生を防ぐ効果があります。防水性や耐久性も高く、寒冷地や高温多湿な地域での使用が多いです。

セルロースファイバー

セルロースファイバーは、再生紙を原料としたエコフレンドリーな断熱材です。防火性能や防音性能が高く、環境に配慮した住宅づくりを考える場合には魅力的な選択肢となります。内断熱としての使用が一般的ですが、外断熱でも使用可能です。

まとめ

断熱材は、快適な居住環境を作り出すためには欠かせません。内断熱と外断熱、それぞれの特徴を理解し、自分の家や地域に最適な方法を選んでみましょう。家づくりを進める中で、断熱性能にしっかりと配慮することで、快適な住まいを実現できるでしょう。

 

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